お疲れ様です。
今日は、昨日20日の18時9分頃に発生した宮城県沖の地震について解説したいと思います。
まず、この地震の規模はM6.9、深さは59kmで地表では最大震度5強を観測したと発表されています。
発生直後にマガジンで述べたように西北西、東南東方向からの圧縮力による逆断層型の地震であり、震源の位置やメカニズム、そして地表での震度分布などから推測するとプレート境界型地震であるということは確かなようです。
2月13日の福島県沖の地震と比較すると少し規模は小さいですが、メカニズム的には今回の地震のほうが広範囲に強く揺れ、かつ、津波の危険性も高くなるので、その点は注意が必要な地震だったと言えます。
今後はしばらく地震活動が非常に活発化するものと考えられますが、福島県沖の地震活動もまだ活発な状態が続いており、東北地方は全体的にこれまでよりもさらに地震のリスクが高い状態になってくると考えられますので、地震の備えは忘れずしておくようにしてください。
防災に関する知識や今後の推移、詳しい観測情報、各地の発震リスクなどについても毎日説明欄にありますマガジンで配信しておりますので、是非防災の役に立ててください。
この地震の前に見られていた異常としては、まずは2月13日の福島県沖地震は時間空間的に近いということもあり、福島県沖地震に誘発された可能性が考えられます。
これは福島県沖の地震が発生した直後の2月14日に配信したマガジンに記載した内容ですが、ここの領域の地震発生のパターンとしてM6~M7クラスの地震が連鎖的に起こることが多いということがわかっています。
さらにその発生パターンとしてプレート内地震とプレート間地震が連鎖的に起こる可能性が高いということについても述べておりますが、もし今回の地震が福島県沖の地震に誘発されたものであるという説が正しければ、まさに想定通りに起きた連鎖型地震であると言えます。
「想定通り」というのは、想定される今後の可能性としてあげたリスト、いわゆる今後別の地震に発展する場合はこのようなケースが考えられますよという想定を防災のためにリスト化したのですが、そこに記載してある通りに起きたということで、このマガジンの一番下に記載してある「そのまま収束に向かい、数日から数か月後にプレート境界で地震が発生する」というケースが該当します。
また、この地震の直前には電離圏の乱れが顕著でしたが、今回も18日に異常値を観測しており、要注意と記載しておりました。
また、今回の地震について気象庁の会見では東北地方太平洋沖地震の余震域で発生したものだから余震であると断言しておられました。
確かにその可能性は高いのですが、3.11の余震と考えるとさらに大きな地震の可能性は低いと思われがちですし、必ずしもそうであるとは断言できないので注意は必要です。
というのも東北地方太平洋沖地震の影響に関わらず、もともとM7クラスの危険性が東北地方の中でも特に高かった場所で、平均十数年というかなり短い間隔でこれまで大地震が発生している非常に活発な領域です。
考えられるケースとしては3つで、この地震は前震なのか、本震なのか、余震なのかで大きく今後の想定は異なってきます。
つまり、今後起こるさらに大きな地震の前震なのか、もしくはこれが本震であり、今後活発な余震活動を伴って収束していくのか、あるいは東北地方太平洋沖地震の余震活動の一つなのかということです。
後者の2つのケースで発生したのだとすると、今後大きな地震に発展する可能性は少ないと考えることができますが、周辺断層での誘発地震の可能性はいずれにしても高い状態となるので注意が必要です。
前者のケースだとすると、宮城県沖で今後さらに大きな本震が発生する可能性があります。
つまり、今後もっと大きな地震が起こらないとは言えるはずがありませんので、東北地方太平洋沖地震の余震活動の一つと捉えるのは人間の心理上の想定外を引き起こす可能性があります。
では一体どちらのケースで発生したものなのか?ということは誰にもわかりませんので、考えられる今後の可能性を想定してしっかりと備えておくことが重要です。
ちなみに南海トラフや日本海溝のようなプレート境界には「アスペリティ」と呼ばれるプレート同士が強く固着した部分が剥がれることで巨大地震が発生するのですが、今回震源となった日本海溝の宮城県沖の領域は実はこのアスペリティが複数あると考えられており、少なくとも3つ以上存在しているということがわかっています。
わかりやすく説明すると、宮城県沖の領域では、同じ領域で同じメカニズムで発生する地震でもまったく別の3つの地震が想定されるということです。
東北地方太平洋沖地震では宮城県沖地震も連動していたと考えられていますが、複数あるうちの一部のアスペリティが滑ったのだとすると、まだ割れ残りが存在している可能性が考えられます。
過去に宮城県沖で発生した地震の規模を見てみるとM7.9という巨大地震が発生したことがあることがわかりますが、これは複数あるアスペリティが同時に滑ったことで規模が大きくなった地震だと考えられています。
この地震は1793年に発生したものであり、平均的な再来間隔は100年弱と計算されているため、前回と同程度の地震を引き起こすほどの歪みを溜め込んでいる可能性は十分考えられます。
では仮にM7.9の歪みが溜まっている状態であると考えると、今回のM6.9の地震の発生によってその歪みは完全に解放されたと言えるでしょうか?
マグニチュードが1小さいだけで、そのエネルギーは1/32になるということは皆さんも聞いたことがあるかと思います。
つまり、かなり単純に考えてしまうと、依然M7.9の地震が発生する可能性は全然残されていますし、M6.9の地震がまだ30回発生しても歪みは解消されないということになります。
東北地方太平洋沖地震の余震だという見解について否定はしませんが、100%そうであると信じ込んでしまうと、このような単純な想定が見えにくくなってしまいます。
また、内陸活断層への影響や地震活動が岩手県沖まで飛び火する可能性など、あらゆるケースが考えられるのですが、これを収録しているのが地震発生日の23時過ぎですので、今後の可能性や周辺の誘発リスクなどについては後日見解をまとめて、マガジンで配信したいと思います。